ヴィブラートの基本編
今回はヴィブラートについて、筆者が知っている情報を書いて行こうと思います。
ヴィブラートの種類について
ヴィブラートには以下3種類のかけ方があります。
- 前腕が主体のヴィブラート
- 手首が主体のヴィブラート
- 指が主体のヴィブラート
主体と書いていますが、腕や手首だけを使っているわけではなく、腕・手首・指の中で使っている割合の大きいもの、という理解をして下さい。
それぞれの詳細について記載していきます。
前腕が主体のヴィブラート
アームヴィブラートとも呼び、肘から先の腕を使ってかけるヴィブラートです。
個人的な体感では、肘を動力源として、
前腕6:手首2:指2
くらいの割合でヴィブラートがかかるイメージです。
以下のような特徴があります。
- 大きな動きでかけやすい
- 日常生活でも使う動きに近いため、習得しやすい
- やや過剰になりやすい
初心者の方にまずお勧めしたいのは、この前腕主体のヴィブラートです。
ドアをノックするような動作をイメージしていただくと良いです。
手首が主体のヴィブラート
スズキメソッドで習っていた方などは、このタイプのヴィブラートを習ったのではないでしょうか。また、演奏においても使用頻度は高いです。習得難易度は高めです。
手首を動力源として、
手首6:指3:腕1
くらいの割合になっていると思います。
以下、特徴です。
- 回数、大きさともにバランスの良いかけ方ができる
- 密度の濃いヴィブラートがかけられる
- 力んだ時に回数をコントロールできなくなる
指が主体のヴィブラート
こちらも習得難易度は高いです。
主にハイポジションや、例えばpp以下の音量指定がある時などの繊細な表現が必要な場面で使えます。また、古典の協奏曲を演奏する場合などは、腕や手首では過剰になってしまうため、指を主体とする場面もあります。
割合は、指を動力源として
指6:手首3:腕1
くらいです。
筆者は指を上下に動かすイメージだと師匠から教わりました。
以下の特徴があります。
- 繊細な表現が可能
- かなり細かくかけることができる
- 習得困難なので、練習には根気が必要
ヴィブラートのかかりにくい指について
これはやってみればわかると思いますが、人差し指と小指はヴィブラートがかかりにくいです。
特に指を主体にヴィブラートをかけた場合に顕著です。
これらの指でヴィブラートをかける場合は、中指と薬指でヴィブラートをかけるときよりも多めにかけることを心がけた方が良いでしょう。
小指の場合は、薬指も一緒に押さえて補助に使うことも有効です。
練習方法について
3種類のヴィブラートを紹介しましたが、いずれも練習方法は同じで、一定のテンポの中で決められた回数ヴィブラートを入れる練習をします。
ヴィブラートは押さえた指を低い音程側=渦巻き(スクロール)側に倒す動きを基本とします。
文字にすると以下のような具合です。
例) ドの音にヴィブラートを入れる
ドド↓ドド↓ドド↓ドド↓
以後の説明では、この「ドド↓」で2回、「ドド↓ド」で3回、ヴィブラートを入れるという表現をします。
四分音符テンポ60で、まずは一拍につき2回ヴィブラートを入れて、弓元から弓先まで8拍かけて弾いてみましょう。恐らくテンポ的にゆとりがあるはずです。
この時、ドからド↓は素早く切り替えるようにします。次の拍が始まる直前に切り替えるイメージです。
テンポが遅いうちから、テンポが早くなってきた時の動作を想定して練習をするようにしましょう。
安定してきたら、今度は1拍につき3回ヴィブラートを入れてみます。それもできるようになったら4回入れてみましょう。
1拍につき8回コントロールしてヴィブラートを入れることができ、8拍かけて全弓で弾けるようになれば、ある程度色々な速度に対応できるようになっていると思います。
2回→3回→4回→6回→8回という順番でやってみてください。
※5回と7回はかなり難しいので省きました。
練習の注意点
この練習をやる時、必ず守って欲しいことがあります。
それは、コントロールできないうちからヴィブラートを入れる数を増やさないことです。
回数をコントロールしきれていない状態で無理やり回数を多くしようとすると、俗に言うちりめんヴィブラートになり、美しさとはかけ離れたものになってしまいます。
特に、手首と指主体のヴィブラートは、我々の日常生活にない動きを習得する必要があります。そのため、焦りは禁物です。
まずは、狙った回数を確実に入れることができるようになるまで練習しましょう。
今回はここまでです。少しでもお役に立てば幸いです。