左手の練習についての考察:速弾き編
実戦での最初の壁:速弾き
アマチュアプレーヤーがまず難しいと感じるのは、早いテンポでの細かい音符の連続でしょう。
かくいう私もとても苦手で、中高生の頃などはあまりに苦手なものだから、いつもいつも早弾きのフレーズを練習していたものです。
例えばグリンカのルスランとリュドミラの弦楽器。あれを某ロシアの指揮者のようにとんでもないテンポで振られようものなら、とてもとてもアマチュアでは対応できないことでしょう。かっこいいのですけどね。
しかし、たとえアマチュアとは言え、なかなかに速いテンポを要求される場面もままあります。
今回はこういう場合にどう対処するのかを考察してみたいと思います。
左手に関して気をつけるべき3つのこと
上手な人の運指を見てみると、早いフレーズでも思ったより余裕を持って指を押さえていることに気づくと思います。
ではどうやって早いフレーズで余裕を持って指を押さえるのでしょうか。
1.押さえすぎない
押さえすぎるということは、余分な力で弦を押さえつけてしまっているということです。
左指の動きについて非常に単純化して説明すると、「押さえる」「離す」の2つの動きを繰り返しているということになります。
この時「押さえる」方に余分な力を入れてしまうと、「離す」動作が阻害され、その結果指を早く動かすことが困難になります。
スポーツでも同様のことを言われることが多いですが、力の入れどころを1点に集中させるイメージを持つことで、常に強い力で押さえなければいけないという考えを変えることができるかと思います。
野球で例えれば、構えてから振り切るまで常に力を入れているよりも、バットとボールのインパクトの瞬間だけ全力を入れる方が鋭いスイングができる、ということと似ているのではないでしょうか。
2.動かしていない指に力を入れすぎない
これは先述の「押さえすぎない」に通じる部分があります。
例えば人差し指から小指まで、全ての指を速いテンポで動かす必要がある場合、薬指と小指を早く動かそうとしている時に人差し指や中指に力が入りすぎていると、指がこわばって動きにくくなるはずです。
動いている指(押さえる・離す動作をしている最中の指)以外に不要な力を入れないようにすることで、可動性が良くなります。
3.余分な動きを極力なくす
これが一番難しく、日々の練習が必要になります。
まず余分な動きとは、以下のようなものです。
・運指のミス
・力みによる手のこわばりや震え
・音程ミスを補正するための指のスライド
運指のミスに関しては、正しい運指で演奏可能なテンポから少しずつテンポを上げていく反復練習をしていくことで改善できます。
ただし、この練習は時間がかからない分、やらなくなると効果が切れるのも早いです。
続いて力みについてですが、これは力みにつながる原因を探すことが改善への一歩です。
一例で言えば、ポジション移動や移弦、押さえる・離す動作が多く必要になる運指をしている場合、余分な左手の運動が必要になり、力みにつながります。
まずは鏡を使いながら、無駄な力が入っているかどうかを確認しながら弾いてみるのも良い練習になります。
最後に音程ミスの補正です。
実際の演奏会の場面において、最初から最後まで一つの音程もミスなく演奏することはほぼ不可能でしょう。(もちろんそれが可能なように練習では努めるのですが)
それでも極力正しい音程で演奏しなければならないため、実戦の場面ではすばやく音程を補正することはよくあります。これは、曲を通して弾く段階では準備しておく必要があるスキルです。
ただし、練習の初期段階では、音程ミスの補正は「本来はせずに済む」ことを想定して取り組むべきです。
この場合の初期段階とは、運指のミスの対策である反復練習をしている段階のことです。
この段階では、最低限の動作で正しいリズムと音程を捉える練習を重ねることで、無駄な動作を省いていきます。
今回はここまで。
最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。
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